天の川、スカイフィッシュの釣り堀にて

安眠妨害水族館では書かないこと、書けないこと

「好きなものの定義」

"ヴィジュアル系が好きな人"ということで友達から紹介された人が、若い頃にラルクが好きだっただけで、インディーズはからっきし。

話が全然噛み合わなくて、なんとなく気まずい空気になる…なんて経験はないだろうか。

どちらが悪いという話では全然ないのだけれど、どうしてもモヤモヤしてしまう。

 

あくまで僕個人の定義として、好きなものとして公言するものは、「そんなに好きじゃないものでも好き」ということにしている。

普通の音楽好きが目を背けるようなジャリバンですら目を細めて聴くことができるので、僕はヴィジュアル系が好きだと自信を持って言える。

ラーメンもそう。

行列店のラーメンが美味しいのは当たり前で、チェーン店の量産型ラーメンも、インスタントラーメンもカップラーメンも美味しいと思えるから好きなのだ。

 

ラーメンが好きだという人に、「カップラーメンは最近明星から出たやつが美味しい」みたいな話題を振ると、「カップラーメンはラーメンとは認めないよ」なんて返されてしまうのだが、僕からしてみたら、"行列店のラーメンが好き"ってちゃんと言ってほしい。

だって、北海道で食べたウニ丼がめちゃくちゃ美味しくて感動したけれど、近所のスーパーで売っているウニ丼は食べる気がしない。

そんな僕がウニ丼が好きだって言っているようなものじゃないか。

 

もっとも、この定義はたぶん一般的ではないというか、多くの人とズレているのだと思う。

だから、相当にモヤモヤを抱えた青春時代を送っていたのだけれど、大人になってからは、あまり気にならなくなってきた。

"食べ歩き"という言葉を発見したからだ。

「趣味はラーメンの食べ歩き」と言えば、チェーン店やカップラーメンは自ずと排除できる。

美味しいラーメン屋が美味しいのは当たり前、という単純な話から、美味しいラーメン屋を目的として、その街の情緒を味わったり、店主や客との交流が深まったり、という付加価値も想像することができ、行動に深みが伴った気もしてくる。

なんだか話が噛み合わないな、と思ったら、「あなたはラーメンの食べ歩きが好きなのですね」と言い換えれば、だいたい軌道修正できることがわかってきた。

たとえばこれがコーヒーだったらカフェ巡りで置き換えれば良い。

 

同じテーマについて話をしているのに、上手く会話が進んでいかないのは、おおかた定義が双方で異なっているから。

そのジャンルに好きなものがひとつでもあれば「好きだ」と定義づけている人と、好きではないものがひとつでもあれば「好きだ」と定義づけることが出来ない人とでは、そりゃ認識に歪みが出て当然だもの。

用語を置き換えて再定義してやることで、きっと話は前進していくはずだ。

 

さて、若い頃はラルクが好きだったというこの人を、どう再定義しよう。

単純に「ラルクが好きなんですね」と対象バンドを限定して会話を広げればいいのだけれど、あわよくば、もっと探ってみたい気持ちもないわけではない。

なんか上手い言葉、見つからないかな。

 

その結果、僕の口から飛び出したのは「バンドマンの食べ歩きが好きなんですか?」。

気まずさが最高潮に達して、飲んでいたコーラ、スーパーのウニ丼の味がした。