天の川、スカイフィッシュの釣り堀にて

安眠妨害水族館では書かないこと、書けないこと

「彼方のアストラ」

好きな漫画を聞かれたら、ずっと「ONE OUTS」と答えていた。

甲斐谷忍先生による野球漫画。

いや、たぶん野球漫画という表現は正確ではなく、甲斐谷先生らしい知能戦が描かれている。

こんなにも汗のにおいがしないスポーツ漫画を、僕はほかに知らない。

 

もちろん、「ONE OUTS」に冷めたということではなく、引き続き好きな漫画であり続けるのは間違いないのだけれど、人に薦めるという観点で、次に聞かれたらこう答えようという漫画が見つかった。

それが、「彼方のアストラ」である。

 

f:id:sakanagatoretaskytree:20180409234536j:plain

 

SKET DANCE」の篠原健太先生の作品。

ジャンプ+というデジタル媒体での連載だったため、正直なところ、最初は様子見をしていた。

SKET DANCE」が好きだったので、次回作にすんなり頭が移行しなかったということもあるのだけれど、そもそも紙媒体で読みたいという古い頭があったから。

とりあえず、単行本が出るまで待とう、と。

 

ところが、ジャンプ+が、まだマイナーな媒体だったからか、実際に現物を店頭で見かけることはあまりなく。

結局、単行本が出ていることに気付いたのは、2巻が発売され、間もなく3巻も出るというタイミングだった。

ただし、結果論ではあるが、それが良かったのだと思う。

 

というのも、この作品はまとめ読みに向いている。

1巻は起承転結の「起」の部分。

どちらかというとコメディ寄りのスペースファンタジーといった様相で、"宇宙でSKET DANCEをやっている"という感覚を覚えた。

Amazonのレビューを眺めてみたが、この段階での評価は芳しくなかったと記憶している。

 

一方で、それらが全部伏線であったと驚くのが、2巻以降の展開だ。

1巻の最後にぶち込まれるミステリーの要素が、徐々に輪郭を強め出して、やがて物語を飲み込んでいく。

フーダニットと、少年少女たちの冒険譚が交互に押し寄せる構成で、謎解きをしたい気持ちと、誰も犯人であってほしくないハッピーエンドを望む気持ちが交錯。

読み進める手が止まらなくなっていた。

とにかく続きを読みたい一心で、あんなにも抵抗があったジャンプ+を遂にスマホにインストールする始末。

隔週連載だったため、2017年末に完結するまでは土曜日になると、今日は更新日だったか、そうでなかったか、とソワソワしながら週末にログインしていたぐらいである。

 

また、まとめ読みに向いている最大のポイントは、全5巻と非常にコンパクトであるということ。

加えて、その軽量さとは裏腹、どんでん返しがひとつどころではなく、ふたつ、みっつと次々に畳み込まれること。

どんなに面白いと評判でも、50巻を超える大作であれば、なかなか読もうとは思い切れないものだ。

しかし、「彼方のアストラ」は、たったの5巻。

その中に、とても濃い密度で大冒険とミステリーが詰まっているのだから、"今度の休みにまとめて読んでみよう"と手に取るにはぴったりのサイズ感なのではなかろうか。

 

ネタバレを避けるため、抽象的な紹介になってしまった感はあるが、人に薦めやすい名作。

今後、好きな漫画を聞かれたら、馬鹿の一つ覚えみたいに「彼方のアストラ」と答えていこうと思う。

 

ちなみに、「SKET DANCE」由来の小ネタも相応にあり。

当時ファンだった人も是非読んでみてほしいものだ。