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天の川、スカイフィッシュの釣り堀にて

安眠妨害水族館では書かないこと、書けないこと

「分け目」

わ行

「分け目はどちらにしますか?」

美容院に行くと、最後のセットのタイミングで必ず聞かれる質問。

僕は、これがどうも苦手だ。

 

当然、前髪が伸びてくればどちらかに流すのだが、髪を切ったその瞬間は、分け目を作らなくても済むぐらいまでに短くなっている。

前髪を下ろしたいから、そうオーダーしているのだ。

はじめて行く美容院ならともかく、いつも行ってるところで、いつも切っている髪型。

毎回、「分け目は要らないので下ろしてください」と言わなければいけないのも、面倒というか気まずいというか。

それがそのまま、苦手意識になってしまった。

 

原因はなんとなく察している。

土日の午前中という比較的混みやすい時間帯ということもあってか、終盤のマッサージやセットは担当の美容師さんではなく、アシスタントにチェンジするからだ。

担当制ではないアシスタントに、いつも来ているのだから知っておけ、というのも酷な話。

そもそも1~2ヶ月に1度の散髪で、"いつも来ている"とは厚かましい。

店内で分け目をどうするかの引継ぎを行うより、お客さんに確認するほうが早い、となるのも仕方のないことだろう。

 

ここで素朴な疑問が沸いてきた。

「分け目はどちらにしますか?」は、どのぐらいの長さから聞かれるのだろうか。

極端な例として、坊主頭にした人に、この質問はしないはず。

もしかしたら、髪の毛のプロの美容師さんだもの、過去に分け目があったことを示す微妙な癖を見つけて、確信を持って聞いているのでは。

または、「お前、下ろすの似合わないから、大人しく流しとけ」っていうメッセージが込められているのかもしれないぞ。

 

そんなことを考えていたら、前髪を下ろしては申し訳ない気持ちになってくる。

物は試しと右側に分け目を作ってもらった。

これはこれで良いかもしれないな、と思い始めていたのだが、そうだった、肝心なことを忘れていた。

僕が前髪を下ろしている理由。

"前髪がないとなんだか眩しくて、眉間に皺が寄ってしまう"こと。

もちろん気のせい以外の何物でもないのだが、これがどうにも厄介なもので、意識してしまったら最後、本当に目が回ってくるのだ。

 

結果として、切羽詰った形相で「駄目!やっぱり下ろしてください!」と訴えることに。

アシスタントを大いに怯えさせてしまった。

あなたのセットが悪かったわけではないので、どうか気に病まないで。

 

もともと苦手だったやりとりが、ますますトラウマになった僕。

分け目を作っただけでこの有様なのだから、坊主頭にでもしようものなら死んでしまってもおかしくない。

不祥事を起こして頭を丸めることにならないよう、誠実に生きていこうと思う。