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天の川、スカイフィッシュの釣り堀にて

安眠妨害水族館では書かないこと、書けないこと

「シン・ゴジラ」

今更ではあるが、「シン・ゴジラ」は面白かった。

でも、おそらくもう見ないと思う。

 

誤解を避けるために弁明しておくと、明らかに非現実的な設定なはずなのに妙に生々しさがあって、ぐいぐいと作品に引き込まれた。

ゴジラの迫力もさることながら、政治的な駆け引きや登場人物のキャラクターなど、小ネタも含めて見所が至るところにあって、Blu-rayやらDVDやらで見るべきかを迷っている人がいるのであれば、迷わず背中を押そうとは決めている。

もう見たくない理由は、ただひとつ。

リアリティがありすぎて、胃がキリキリするから。

 

僕は、かつて自社の危機管理の仕事をやっていた。

あまり馴染みがないと思うけれど、メインの業務は、何らかの緊急事態が発生しても会社としての動きを止めないようにするためのプランニング。

最近ではBCPと呼ばれたりもしている。

地震が起こって工場が倒壊したら?

1箇所で生産しているとリスクがあるから、東京だけでなく、大阪にも工場を作ろう。

交通機関がマヒして、出勤できない人が大多数になったら?

徒歩で出勤できるメンバーを確保するために、社員寮は主要拠点の近くに作ろう。

会社にゾンビが入ってきたら?

ゾンビは歩くのが遅いから、椅子や机などで通路を塞いでしまえば問題なし!

日本の企業はこんなことを考え、常に不測の事態に備えているのだ。

 

例を見てわかるとおり、規模が大きい話になってしまいがち。

プランにしても、ひとつで十分ということはなく、東阪の同時被災も有り得るため、第三の工場を検討する必要もあるし、足の速いゾンビの可能性も想定して、化学兵器も用意しておくのが無難だろう。

しかしながら、コストに対して計画自体は収益を生まないから難しい。

やったほうがいいのは間違いないのだけれど、使える予算には限界があり、優先順位を決めて、コツコツやっていくしかないのがこの仕事だ。

多くの企業で、ゾンビ対策は後回しになっているのでは。

 

そういう企業の裏方を知っていると、この映画はもうキリキリしっぱなし。

都心でゴジラが暴れ周り、その対応に追われる対策本部の様子がリアルに描かれているので、"うちの会社もヤバいぞ…あれも考えなければいけないし、これも指示しなければいけない…"とか、"優先順位を間違えた!怪獣対策を先にしておけば!"とか、当時の自分に置き換えて考えてしまう。

最終的にゴジラは静止するのだが、"この後に、ネットワークを復旧させたり、業務停止していた期間のリカバリーのことを想像すると気が滅入る…"と、ラストシーンの爽快感も半減。

何もないガランとした会議室を災対環境に整備するため、机を運んで、パソコンを設置して…というくだりは"よくぞわかってる!"と、そのリアリティに震えたし、とにかく面白かったというのは嘘じゃないのだけれど、これをもう一度見る気力を振り絞れないまま、公開が終わってしまったという。

 

それでも気になって調べてみたら、どうも見逃した小ネタがたくさんあった模様。

まだ重い腰は上がらないけれど、怪獣映画は大好きで子供の頃に好きだったウルトラマンシリーズを今もDVDで見ている僕。

何年かして、あの頃の仕事が"良い思い出"になった暁には、"お父さん、あんな仕事をしていたんだよ"とか言いながら、子供と一緒に「シン・ゴジラ」を見れる日が来たら良いな。

娘、"怪獣さんは怖いから嫌い"と宣言しているので、そもそも一緒に見てはくれない気がするけど。