天の川、スカイフィッシュの釣り堀にて

安眠妨害水族館では書かないこと、書けないこと

「彼方のアストラ」

好きな漫画を聞かれたら、ずっと「ONE OUTS」と答えていた。

甲斐谷忍先生による野球漫画。

いや、たぶん野球漫画という表現は正確ではなく、甲斐谷先生らしい知能戦が描かれている。

こんなにも汗のにおいがしないスポーツ漫画を、僕はほかに知らない。

 

もちろん、「ONE OUTS」に冷めたということではなく、引き続き好きな漫画であり続けるのは間違いないのだけれど、人に薦めるという観点で、次に聞かれたらこう答えようという漫画が見つかった。

それが、「彼方のアストラ」である。

 

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SKET DANCE」の篠原健太先生の作品。

ジャンプ+というデジタル媒体での連載だったため、正直なところ、最初は様子見をしていた。

SKET DANCE」が好きだったので、次回作にすんなり頭が移行しなかったということもあるのだけれど、そもそも紙媒体で読みたいという古い頭があったから。

とりあえず、単行本が出るまで待とう、と。

 

ところが、ジャンプ+が、まだマイナーな媒体だったからか、実際に現物を店頭で見かけることはあまりなく。

結局、単行本が出ていることに気付いたのは、2巻が発売され、間もなく3巻も出るというタイミングだった。

ただし、結果論ではあるが、それが良かったのだと思う。

 

というのも、この作品はまとめ読みに向いている。

1巻は起承転結の「起」の部分。

どちらかというとコメディ寄りのスペースファンタジーといった様相で、"宇宙でSKET DANCEをやっている"という感覚を覚えた。

Amazonのレビューを眺めてみたが、この段階での評価は芳しくなかったと記憶している。

 

一方で、それらが全部伏線であったと驚くのが、2巻以降の展開だ。

1巻の最後にぶち込まれるミステリーの要素が、徐々に輪郭を強め出して、やがて物語を飲み込んでいく。

フーダニットと、少年少女たちの冒険譚が交互に押し寄せる構成で、謎解きをしたい気持ちと、誰も犯人であってほしくないハッピーエンドを望む気持ちが交錯。

読み進める手が止まらなくなっていた。

とにかく続きを読みたい一心で、あんなにも抵抗があったジャンプ+を遂にスマホにインストールする始末。

隔週連載だったため、2017年末に完結するまでは土曜日になると、今日は更新日だったか、そうでなかったか、とソワソワしながら週末にログインしていたぐらいである。

 

また、まとめ読みに向いている最大のポイントは、全5巻と非常にコンパクトであるということ。

加えて、その軽量さとは裏腹、どんでん返しがひとつどころではなく、ふたつ、みっつと次々に畳み込まれること。

どんなに面白いと評判でも、50巻を超える大作であれば、なかなか読もうとは思い切れないものだ。

しかし、「彼方のアストラ」は、たったの5巻。

その中に、とても濃い密度で大冒険とミステリーが詰まっているのだから、"今度の休みにまとめて読んでみよう"と手に取るにはぴったりのサイズ感なのではなかろうか。

 

ネタバレを避けるため、抽象的な紹介になってしまった感はあるが、人に薦めやすい名作。

今後、好きな漫画を聞かれたら、馬鹿の一つ覚えみたいに「彼方のアストラ」と答えていこうと思う。

 

ちなみに、「SKET DANCE」由来の小ネタも相応にあり。

当時ファンだった人も是非読んでみてほしいものだ。

 

 

「歌ってみたとか弾いてみたとか」

僕にとって近いようで遠い文化、ボーカロイド市場や歌い手市場。

興味がないわけではないし、V系とのコラボレーション等で話題になったものは聴いたりもするのだけれど、どうも身近に感じることができなかった。

商業的なしがらみが薄い分、実は本当にツボを突く音楽が転がっているかもしれない、とは理解しているのだが。

 

その理由ははっきりしていて、何を聴いたらいいのかわからないから。

YouTubeで音楽を聴いたり、ストリーミングサービスを使うのを避けて、CDやデータを購入することにこだわるのも、結局は同じ理由。

アーティストにお金が落ちないとか、インターネット上で聴ける音楽は味気ないとか、そういう要素ももちろんあるのだけれど、CDショップで何を聴くのか決め打ちして、購入したものをじっくり聴く。

そのスタイルが定着してしまっているだけなのかもしれない、と最近気が付いた。

 

たまに思い立って、新規開拓だ!とYouTubeAmazon musicを漁ったりはするのだけれど、だいたい、1時間以上プレイリストを眺めているだけで、再生ボタンを押さないまま終わる。

無限にある音楽の中から、今この瞬間に聴く音楽を選ぶなんて、動機付けもなしに無理ではないか。

ランダム再生で運命の出会いをすることもあるのかもしれないが、だったら積み残してあるCDを聴くよ、となってしまう。

 

V系シーンの中でさえ、そんな僕だ。

ほとんど無知といってもいいボカロ市場や歌い手市場にまで手を広げるなぞ、どんなに評判が良くても重い腰が上がらない。

こうして人は時代から振り落とされていくのだろう。

サムネをいくつか見て回っても何を聴くか決めきれず、そろそろ寝ないと明日に差し支える、とブラウザを閉じている画が容易に想像できる。

 

 

しかし、ごく稀に、正面突破で"これを聴け"と薦めてくれる人が出現したりする。

Twitterのフォロワーである凸守フィルさん(@zi_ent_Fill)が、ジエントというサークルを立ち上げるということで、公開された音源のURLをDMから送ってくれた。

 

www.nicovideo.jp

ムックの「絶望」のカヴァー。

始動前のデモセッションという位置づけのようだ。

大幅なアレンジはせず、原曲のおいしいところを忠実に再現する構成だが、細かいニュアンスを上手く拾っていて、なんだかとてもノスタルジックな気持ちになった。

重厚な部分と、薄い部分とのメリハリをつけてドラマ性を演出するギターにしても、指引きにより土着的でドロッとした空気感を生み出すベースにしても、相当オリジナルを聴き込んでいるな、と。

 

一方で、ミックスにおいて台詞調のパートやシャウトを強めに出して、新鮮味も加えているのも好印象。

コピーするだけならカットしてもいい部分なのに、丁寧に作っているのが伝わってくる。

 

サイト(https://t.co/xMsa7Q2eZT)を見ると、今後はオリジナル曲などの展開もあるのかしら。

歌ってみた・弾いてみたというよりは、同人市場寄りなのだな。

フィルさん自身も、かつてV系バンドに在籍していた経緯もあるようで(どのバンドかは教えてくれないけど)、過去に公開されている楽曲は、よりV系的なアプローチも取り入れていたりする。

HYBRIDEのアルバム、フルで聴きたいなと思ったけどが在庫なくて残念。

 

同人市場も、知人筋で購入したCDを何枚か聴いている程度だ。

改めて開拓の余地はあるのだよなぁ。

こちらも広義の意味では知人筋となってしまうのかもしれないが、いつか売り物が出来たら、是非聴いてみたいと思う。

加えて、こういう手段をもっと早く知っていれば、僕ももう少し当時の仲間と音楽をやれていたのかな、とちょっと羨ましくも思う。

 

押しには弱い自覚があるので、安眠妨害水族館の管理人ならこういうの好きでしょ、というのがあれば、とりあえず薦めてみてほしい。

今聴いていないからって、知りたくないわけではないのだ。

選択肢を絞るきっかけが欲しいだけなのだ。

 

 

 

「悪ザック、DEATHBIE、黒ユナイト…」

安眠妨害水族館でレビューしたCDは、既に2,000枚を超えているらしい。

配信音源も含まれているとはいえ、他ジャンルのCDも相当数持っているため、少なく見積もっても、記事の数以上のCDを所有しているということになるのだろう。

 

よく聞かれるのが、どうやって保管しているか。

プラケースからソフトケースに移してスペースを圧縮する者、倉庫を借りて置いておく者、ある程度増えたら売るなどして新陳代謝を図る者…

同じ悩みを持つ知人に聞いてみると色々なノウハウがあるようだが、僕は愚直にも、壁面収納にバンド名で五十音順に並べている。

足りなくなったら次の棚を買ってくるので、もう8本目だ。

日に日に廊下が狭くなっていく。

 

さて、そういうときに困るのは、名義変更系の企画CD。

タイトルに記載した通りだが、ZUCKにおける悪ザックや、AYABIEにおけるDEATHBIE、ユナイトにおける黒ユナイトなどだ。

ナイトメアと仙台貨物、己龍とマイドラゴンの関係性のように、別物として並行的に活動している位置づけであれば割り切れるが、これらのラインナップのように元のバンド名をもじっただけで、ほぼ単発での企画だった場合、どう扱うか迷ってしまう。

ZUCKは「さ行」の欄において、悪ザックは「わ行」に置くのが妥当か。

それとも、ZUCKのCDの1枚として一緒に並べるか。

五十音順での保管にこだわる以上、つきまとう問題である。

 

結果として、過去の自分がどう処理したかを確認し、平仄を合わせようということになる。

Kraが36481?名義で出した「フィクション」が、Kraとは別物として「さ行」に置いてあったことをもって、悪ザックは「わ行」に、DEATHBIEは「た行」に、黒ユナイトは「か行」に並べることにした。

 

ちなみに、同じバンドのCDについては、発売順に並べる。

アルバムの1st Pressが2010年に出ていて、2011年のミニアルバムのリリースを経て、2012年に2nd Press盤がジャケット違いで発表。

僕が持っているのは狭間で発表されたミニアルバムと、2nd Press盤だった場合、どちらを前にして並べるかが迷いどころだ。

 

これも、過去の判例を参考に。

アルバムの仕様が同じであれば、1st Pressの発売日を基準とし、仕様が異なればそれぞれの発売日を基準とする。

この例では、ジャケット違いと仕様が異なるので、2nd Pressの発売日が基準日。

要するに、ミニアルバムを前に並べることになるという寸法だ。

 

これらのマイルールを忠実に守ったがために、一番気持ち悪くなってしまったのは、天野月さんの作品群。

彼女は、2008年に活動休止。

2010年に復活するタイミングで、それまでの天野月子から、天野月に名義変更している。

五十音順が優先されるので、先に並べるのが作品群としては新しい方の天野月。

天野月としての最新作の次に、天野月子の1stが置かれるという事態が発生してしまった。

同一人物なのだから、素直に発売順で並び直せばいいじゃないと思うだろうが、そう割り切れるタイプの人間であれば、はじめから苦労はしていない。

つくづく面倒な性格だとは自覚しているが、こればかりは変えられないのだ。

 

ただし、五十音にしていたことによる安堵もある。

ElDoradoからEllDoradoに名義変更したエルドラード。

読み方は一緒だから五十音順では影響を受けないが、アルファベット順であれば、"l"がひとつ増えたことによって、間にEliphas Leviが挟まることを許してしまうから。

格好つけてアルファベット順にしていなくて、本当に良かった。